一般社団法人 北海道高齢者向け住宅事業者協会 - 高住協 - 札幌 「改めて看取りの場所を考える」

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2013年1月6日(日)
「改めて看取りの場所を考える」
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明けましておめでとうございます。
昨年は、北海道高齢者向け住宅事業者連絡会が4月に発足し、初年度から住宅フェアや市民セミナーなどいろいろと実施してきました。今年は、厚労省の補助金事業で住宅の自己評価事業と、国交省の補助金事業で高齢者向け住宅相談員養成研修事業に取り組んでいます。しかし、組織基盤、財政基盤は全く脆弱ですので、更に走り続けて事業展開をしていかねばと考えております。
その皮切りに、高齢者向け住宅やケアなどにまつわる情報発信をもっとしていくこととし、その手段の一つとして、「会長ブログ」を始めることとしました。大体1週間に1回ぐらい載せて行きたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

第1回  改めて看取りの場所を考える
高齢者向け住宅がどんどん増え続ける背景には様々な原因がある。同居率が減少するなど家族形態が大きく変わって来ていることが最大の原因であるとは思うが、介護を必要とする方の場合は、病院や施設に頼ることが難しくなってきたことも大きな原因だろう。社会保障政策として病床数は増やさないし、施設の定員増も介護保険料の値上げに直結するのでおいそれとは増やせない事情があるからだ。
厚労省が高齢者向け住宅に期待しているのは、まさに病院や施設の代わりに利用者のケアをしてほしいということと、できれば最期まで看ていただきたいということであることは明白である。それを象徴するのが、私も講演などでよく使用するスライドで「厚生労働省「死亡場所別、死亡者数の年次推移と将来推計」である。
 このスライドでは、厚労省は2030年には、年間165万人の方が亡くなるとし、医療機関での死亡が89万人、介護施設での死亡が9万人、自宅での死亡が20万人とし、残りの「その他」が約47万人(約3割)にも達するとしている。この推計には、①医療機関は病床数の増加なしで死亡数は現在と同じ、②介護施設は現在の2倍を整備するので、死亡も2倍、③在宅医療の強化で自宅死亡は1.5倍に増加、という前提条件が示されている。
私も講演などで『ここで示されている「その他」が有料ホームやサービス付き高齢者向け住宅を指すのです』と解説しているが、実際にそれだけの看取りが高齢者向け住宅等で短期間のうちに可能になるのかというと、私自身疑問を抱いている。
感覚的には、実際にターミナルに直面すると、やはり病院を選択する場合も多いのではないかと思うし、理論的には、病院のベッド数を増やさないから病院での死亡数も増えないという前提は違うのではないかと思う。在院日数を減らせば減らすほど入院患者は多くなるから、病院で亡くなる方も多くなるのではないのかなと漠然と考えていた。
そんなことを思い巡らしているときに、二木立教授(日本福祉大学副学長)の論文『今後の死亡急増で「死亡場所」はどう変わるか?』(『日本医事新報』「深層を読む・真相を解く⑲」2012年12月22日号(第4626号):26-27頁)を、二木教授のニューズレター102号で読む機会を得た。
二木教授は、次のように述べている。
『厚労省推計には、次の3つの「大胆な仮定」が置かれています。①今後病床数の増加はないので、医療機関での死亡数は現在と同じ。②介護施設は今後2倍に整備されるので、そこでの死亡も2倍になる、③在宅ケア施策の強化により、自宅死亡は1.5倍に増加する。しかし、これらのうち仮定①は、過去の現実に反しており、不適切と思います。なぜなら、過去20年間(1990~2010年)に病院病床数は167.7万床から159.3万床へと8.3万床(5.0%)減少したにもかかわらず、病院内での死亡者数は58.7万人から93.2万人へと34.4万人(58.6%)も増加したからです(表1)。その結果、1病床当たりの年間死亡者数は35.0人から58.5人へと66.9%も増加しました。これの主因は、平均在院日数が50.5日から32.5日へと35.6%も短縮したからです(病床利用率は83.6%から82.3%へと微減)。ちなみに、過去20年の病院内死亡数と平均在院日数との相関係数は実に-0.982に達します。
厚労省は今後病床数が一定とする一方、病院の平均在院日数は2025年には24日程度に低下するとしています(「医療提供体制について」中医協2011年11月25日提出資料)。
 このことを考慮すると、今後20年で、過去20年と同水準(34万人)の病院内死亡数の増加は決して不可能とは言えないと思います。従来、必ずしも救急医療に熱心に取り組んでこなかった民間中小病院(一般病床と療養病床の両方)の中に、入院患者確保のために高齢者の救急医療に積極的に取り組み始めている病院が増えていることを考えると、これは十分に現実味があります。』(前述のニューズレターより引用)
なるほど、学者はきちんと裏付けてものを見るものだなあと感心した(「お前ができていないだけ」と指摘されたら「ごもっとも」としかいえないが)。
ただ、前掲論文のように今後20年で医療機関で34万人の死亡数増加があったとしても「その他」の47万人-34万人=13万人はやはり、住宅か施設で看ることとなるので、二木教授も高齢者向け住宅等での看取りが増大せざるをえないことも指摘している。その際、やはり医療のバックアップが必要となることは言うまでもない。
高齢者向け住宅がどのように医療と連携していくか、大きな課題といえる。
また、高齢者向け住宅での看取りに取り組む際には、医療との連携ばかりではなく、本人の意志や家族の意向などをきちんと確認するという大きな問題もある。そのことはまた別の項で考えたい。
2013年1月6日  奥田龍人
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